【DX学校事例】長崎の県央地区で過去15年間の新築着工総棟数1位を獲得した建売住宅会社の業務改革に迫る

大誠ハウス株式会社 代表取締役社長 金子 雄治 社長 インタビュー

はじめに

長崎の県央地区を中心に、分譲地の開発と建売住宅・自由設計住宅の施工・販売を手がける大誠ハウス株式会社。同地区で過去15年間の新築着工総棟数1位を獲得という輝かしい実績を誇る同社ですが、その裏には業務効率化と組織変革への挑戦がありました。

今回は、代表取締役社長の金子雄治社長に、DX学校のIT導入士講座受講、IT導入の取り組み、業務改革成功の秘訣について詳しく伺いました。

大誠ハウス株式会社代表取締役社長 金子 雄治

安心安全でより良い家づくりを追求し、長崎県央地区で過去15年間の新築着工総棟数1位を獲得

株式会社ディグナ 代表取締役社長/DX学校校長 梅崎 健理

日本の中小企業を支援するためにDX学校を立ち上げる

DX学校 IT導入診断士 岩永陽子

長崎県諫早市を中心に地域の中小企業のデジタル化の支援を提供し、地域の頼れる存在として活躍中

DX学校との出会い

梅崎:まず、会社の事業内容について教えていただけますか?

金子社長:当社は土地付き建物の分譲を行っている会社で、土地を仕入れて開発し、その上に建売住宅を建てて販売しています。今年で37年目を迎えます。

梅崎:長崎の県央地区では老舗の企業ですね。

金子社長:はい、主に長崎の県央地区で活動しており、時には佐賀県でも分譲を行っています。おかげさまで地域のお客様にご支持いただき、県央地区での過去15年間の新築着工総棟数1位の実績を達成することができました。

梅崎:それは素晴らしいですね。同じ地区でこれだけの実績があると、改善するところがないようにも思えますが。

金子社長:
いえ、実は以前はかなり大変な状況でした。私が入社した当時の会社は、いわゆるパワハラ的な風土で、「売ってこい」や「早く建てろ!」といった指示が上から部下へ飛び交っている状況でした。休みもほとんどなく、朝から夜の10時、11時まで働くのが当たり前でした。

すべて紙ベースで、図面も手書きでした。私はそれを今の時代に合わせて、就業規則から見直し、働き方を改革したいと思っていました。

その中で、一つ一つ改善を進め、CADを導入して図面をデジタル化したり、タイムカードを廃止して直行直帰ができるようにしました。現場での業務が多いので、働きやすい環境を整えました。そこで岩永さんからいろいろとアドバイスをいただき、変革を進めてきました。

梅崎:DX学校の岩永講師に出会う前から、そういった改革に取り組まれていたのですね。

金子社長:できる範囲で進めていましたが、最大の課題は『分譲クラウド』(クラウド型のITツール)の導入でした。実は10年前から導入を検討していたのですが、なかなか実現できずにいました。

既存の仕事のやり方、業務フローを大きく変える必要があり、ハードルが高かったんです。『分譲クラウド』は建築・分譲に特化したクラウドサービスで、以前は自社サーバーで顧客データを管理していましたが、サーバーの入れ替えや管理に多大なコストがかかっていました。クラウド化すれば、容量も気にせず、管理の手間も省けます。しかしながら、当時は社内に様々なソフトが乱立していました。

梅崎:自社開発のソフトウェアも使っていたのですね。それにも相当なコストがかかっていたと思いますが、そのソフトはどのような機能を持っていたのですか?

金子社長:思いつく限りの機能を入れました。業者さんとの受発注管理、つまり発注書を出して承認を得る仕組みです。本来は一件一件契約書を作成すべきところを、一括で業者ごとに作成し、確認してもらう発注管理システムでした。

しかしそのシステムは受発注管理だけで、他の管理や経理を強化しようとすると別途対応が必要でした。そのため、エクセルで手動連携し、経理を経て支払いを行うなど、手間がかかっていました。

梅崎:それでは業務が二重三重になり、非効率ですね。結果として業務量も増えてしまいますよね。基幹システムを刷新してクラウド化することを10年前から構想されていたのに、なかなか進まなかったと。そんな中で『分譲クラウド』の提案があり、それを聞いてとても良いと感じたのですね。

金子社長:全社員に話をして、これは良いシステムだと共感を得たのですが、業務のやり方を変える必要があり、なかなか進みませんでした。結果として時間だけが過ぎ、無駄なコストも発生してしまいました。業務フローを見直してほしいと思っていたのですが、なかなか難しかったのです。

梅崎:具体的には、業務の進め方自体を変えなければならなかったということですね。『分譲クラウド』を導入しようとしても、なかなか前に進まなかった。そのような状況の中で、岩永講師との出会いがあったのですね。

金子社長:はい。

IT導入を推進するためにまずはIT人材を育成を実施

梅崎:DX学校のIT導入士講座を受講された経緯を教えていただけますか?

岩永講師:私からご提案させていただきました。ITを導入するには、それを推進できる人材が社内に必要だとお伝えしたんです。

『分譲クラウド』を導入するにあたり、会社のやり方を変える必要があります。その視点で、今後何を考えていくべきかを学ぶために、IT導入士講座の受講を提案しました。
ただ、最初は社長も受講することは難しいと感じていらっしゃいました。

金子社長:実際、私はパソコンもあまり使えない状態でしたので、無理だなと思っていました。本来は他の事務スタッフに受けさせたほうがいいのではないかと考えていたんです。そこで、二人で受講するように指示しました。

講座を受けるきっかけは、業務を効率化したいという強い思いからです。業務がバラバラで統一されておらず、クラウド上で書類を共有し、すぐに閲覧できるようにしたいと考えていました。資料が手元に届くまでに1週間以上かかることもあり、担当者が休みだとさらに遅れます。必要な数値をすぐに確認できない状況を改善したかったんです。

パソコンでデータを入力し、全員がリアルタイムで情報を共有できるようになれば素晴らしいと思いました。システムを整え、データの引き出し速度もITで向上できると。それならば、嫌がっている場合じゃない、自分が学ばなければ成長できないと思い、やはり社長である自分が率先して取り組まなければと気づき、講座の受講を決意しました。

講座を受講して得られたもの

梅崎:講座を受けてみて、全体の感想をお聞かせいただけますか?

金子社長:今回、IT導入診断士である岩永さんのサポートを随時受けながら進めることができたのがとても良かったです。そして、社内で「自分たちにもできる」という共通認識が生まれました。もともとパソコンの知識が乏しく、操作一つにも苦労していましたが、講座を受けてからコンピューターやインターネットへの理解が深まりました。

梅崎:具体的には、どのような変化がありましたか?

金子社長:以前、取引先からいただいたメールは読むだけで、送信もほとんどせず、電話で済ませていました。しかし今ではメールを頻繁に使い、コピーやスキャン、ファイルの添付などもスムーズにできるようになりました。これらの基本的な操作ができるようになっただけでも大きな進歩です。

岩永講師:講座では、毎週動画を見ていただき、小テストや課題を提出してもらいました。Zoomを使用したオンラインの実践講座では、Google Workspaceを実際に操作しながら、会社での活用方法を一緒に考えました。

金子社長:たとえばGoogle ドキュメントで議事録や書類を複数名で同時に作成するときに、実際にクラウド上で文字が一瞬で反映されるのを体験して、「これは便利だ」と実感しました。遠隔地の支店ともリアルタイムで情報共有できるので、会議のために集まる必要もなくなります。業務効率化の可能性を具体的に感じることができました。

梅崎:最初は難しいと感じる部分もあったかと思いますが、どのように乗り越えられましたか?

金子社長:最初は横文字が多くて混乱しましたが、岩永さんが図解や具体例を使って分かりやすく説明してくれました。また、現状のアナログ業務で改善したい点を相談すると、「それならこういう方法があります」と提案してくれたので、興味を持って取り組めました。少しずつ学んでいくうちに、「自分もやってみよう」という気持ちが芽生えました。

岩永講師:講座では、社長と支店長のお二人に同時に受講していただきました。これにより、お互いに同じ情報を共有し、業務改善のイメージを膨らませていただけたと思います。経営者とスタッフが同じ視点で話し合えるようになることが大切だと考えました。

梅崎:社長自らが受講されることで、社員の方々にも良い影響があったのではないでしょうか。

金子社長:そうですね。私が学ぶ姿勢を見せることで、社員も「自分も頑張らなければ」と思ってくれたようです。以前は任せてばかりでうまくいかなかったので、自分が率先して取り組むことで、社内全体の意識が変わったと思います。

梅崎:素晴らしいですね。経営者が先頭に立ってデジタル化に取り組むことで、組織全体が変わる良い例だと思います。

IT導入成功の秘訣

梅崎:ところで、最初に導入のきっかけとなった『分譲クラウド』ですが、せっかく社内に入れたのに活用されずにいたと伺っています。その時は古いシステムと『分譲クラウド』の両方を使っていたのですか?

金子社長:はい、そうです。両方を併用していたため、コストも二重にかかっていました。

梅崎:そのような状況から、以前はクラウドを使いたくてもなかなか進まなかったのに、現在は『分譲クラウド』を有効に活用されているとお聞きしました。その導入成功の秘訣は何でしょうか?

岩永講師:まずは、業務フローを可視化していただき、無駄な業務を徹底的に洗い出すことから始めました。受講していただいた講座の中では業務フローの正しい書き方、適切な読み方を学ぶ講義もありましたので、さっそく役に立ちました。

無駄な業務を整理し終えたら、『分譲クラウド』を使わないと仕事ができない環境にしました。社員の方々が、ご自身のパソコンにファイル保存したり、クラウドを使わない仕事の仕方が習慣化していたので、この方法はとても効果的だったと思います。

金子社長:これからの時代はクラウド化がとても大事だし、仕事に合わせてシステムをカスタマイズするのではなく、クラウドのシステムに仕事のやり方を合わせていくべきだという考え方を改めて講座で学び、社内のみんなに伝えました。

やはり、スタッフ全員がシステムの便利さを理解し、仕事のやり方をシステムに合わせたことが大きいです。最初は抵抗もありましたが、実際に使ってみて効率化を実感できたことで、積極的に取り組むようになりました。また、経営者である私自身が率先してシステムを学び、導入を推進したことも成功の要因だと思います。

梅崎:その時、社長のご様子や、何か感じられたことはありますか。

岩永講師:スタッフは新しいものに慣れないという問題がありました。そこで、まず古いソフトを使えなくする期限を設定し、業務フローを見直してシステムに合わせることを提案しました。

金子社長:スタッフが定着しない理由を分析し、従来の業務フローをそのまま新しいソフトで再現しようとしていたことが分かりました。そこで、システムのフローに業務フローを合わせることで、無駄を省き、ソフトも使いやすくなりました。

推進するにあたって社内からの反発は?

梅崎:一般的に新しいツールを導入すると、社員の方々には抵抗感がありますよね。御社ではそれを乗り越えられたと思います。同じ悩みを持つ社長さんたちにアドバイスするとしたら、どのようにすれば社内にうまく定着させ、導入を進められるでしょうか?

金子社長:一つの方法は、社長が主導することです。ある程度強制的にでも進めないと、いつまでも進まないことがあります。そして、強制的に導入することで、経費削減や業務の効率化が実現し、これまで費やしていた時間を他のことに充てることができるようになります。

岩永講師:実際、多くのスタッフは最初は批判的でしたが、クラウドでの発注業務が非常に楽になったことを皆さん実感しています。そのおかげで、別のソフトウェアを導入しても、以前より協力的になっています。

今後の展望

梅崎:岩永講師に3年間ご支援いただいていますが、これから取り組みたいことや、現在の課題はありますか?

金子社長:まだシステムを十分に使いこなせていないので、いろいろな機能を活用していきたいです。特に『分譲クラウド』は分譲住宅に適しているはずなので、業者からの発注業務を効率化し、紙の発注をメールで済ませるようにすれば、時間短縮や経費削減になり、スタッフも楽になると思います。
要は、仕事量を減らして従業員が自由に休めるようにしたいのです。忙しくて休めないのではなく、仕事はきちんとしながら、自分のせいで業務が滞らないようにしたいと思っています。

梅崎:冒頭でおっしゃっていたように、旧来型の会社はパワハラ的な働き方が多いと思いますが、そうではなく、従業員の休みの余裕を作るために効率化を進めている。目先の利益だけでなく、なぜそのような働き方改革をしようと思われたのですか?

金子社長:それは私自身の経験からです。子供たちの運動会や行事に全く参加できず、土日も現場で営業活動をしていました。家にほとんどいない生活が当たり前でしたが、それは良くないと思いました。若い人たちには同じ思いをさせたくないので、自分が反面教師となり、休めるように業務の効率化を図っています。

梅崎:素晴らしいですね。ご自身のようになってほしくないという思いからですね。

金子社長:はい、反面教師です。

梅崎:現在、人手不足が深刻ですが、そのような取り組みをすることで退職者も減り、休みを取れる環境を作り、会社としても収益につながると思います。これから新卒の採用をお考えですか?

金子社長:はい。高卒や大卒の方を時間をかけて育てていきたいと思っています。ただ、ハローワークに求人を出しても、50代、60代の方ばかりで、若い人がなかなか来ません。

梅崎:休みを増やすなどの取り組みが、若い人や30代、40代の方が転職してくるきっかけになると思います。

金子社長:そう願っています。以前は休みがほとんどなく、朝8時から夜10時、11時まで働いていました。今は知り合いや紹介で入社してもらうようにしていますが、若い人材の確保は難しいですね。

梅崎:工事現場や職人さんは人材の奪い合いですね。休みを増やし、給与を上げて働きやすい環境を作ると、口コミで若い人が集まってくるという話もあります。紹介での採用は素晴らしいと思います。

金子社長:地道に休みを取れる環境を作り、就業規則も社労士さんに依頼して整備しています。週休二日制を導入し、皆が一生懸命仕事をしてくれています。

梅崎:紹介で人が集まってくるのは素晴らしいことです。これから会社としてどうしていきたいか、社長のお考えをお聞かせください。

金子社長:特に大きな野望はありませんが、少ない人数でも売上と利益をしっかり上げられる会社にしたいです。キャッシュフローが重要で、給与も安定して支払えるようにしたいですね。経費削減も考えています。

梅崎:最近のITやデジタルを活用して、売上を上げる取り組みはされていますか?

金子社長:フランス製のアプリ「My Home」を使っています。平面図から立面図、CGやARで家の中を歩いて見ることができます。営業ツールとしてお客様に提案し、アンケート結果も自動的に出してくれます。月7万5千円のランニングコストですが、新しいチャレンジとして導入しています。

梅崎:設計工程を効率化しているのですね。新しい技術を取り入れており素晴らしいです。

金子社長:設計士もいますが、一つ一つ個別に対応するのは大変です。自社で設計ができるようになることで、効率化を図っています。

梅崎:
社長の人柄と、誠実に会社を運営されている姿勢が、人を集め、良い循環を生んでいるのですね。

IT導入診断士の存在

梅崎:最後にお聞きしますが、DX学校の岩永講師は金子社長にとってどんな存在ですか?

金子社長:知識豊富で、頼りになる存在です。自分が気付いていないことも教えてくれ、本当に助かっています。私たちにはそういった情報や知識がないので、本当に助かります。岩永さんは優れた方で、提案してもらえるのがありがたいです。

岩永講師:業務全体を見直して効率化を図り、事務作業を変えていくことで、さらに効率的になりそうです。ご支援させていただいた結果、業務効率化が進み、なにより喜んでいただけるのが本当に嬉しいです。それが私の喜びでもあります。

梅崎:本日はありがとうございました。

金子社長・岩永講師:ありがとうございました。

おわりに

金子社長は当初、パソコンの操作にも自信がなく、自分が受講することに疑問を感じていらっしゃいました。しかし、業務の非効率さを改善し、クラウドを活用して情報共有を迅速化する必要性を痛感し、自ら学ぶことを決意されました。

DX学校の岩永講師に出会い、経営者自らが率先して講座を受講して学ぶことで、組織全体の意識も変わり、IT導入がスムーズに進むようになりました。任せるだけでは進まなかったプロジェクトも、自分が先頭に立つことで前進し、業務の効率化やデータ活用が実現したとのことです。講座を受講することが単なるスキル習得にとどまらず、組織全体の成長と変革につながる重要な一歩であることを体現していただきました。

Print Friendly, PDF & Email