DX学校は
DX学校は、日本の中小企業のDX推進人材を育成する機関です。日本全国30か所に拠点を置き、人材の育成のほか、実際のIT導入の支援やコンサルティングも行なっています。「DX」とはデジタルの力を使って変化を起こし、売上や利益を伸ばすしくみを作ることです。DX学校がスタートしたのには「地方創生」も関わりがあったのです。
地方創生
「地方創生」とは、東京一極集中を是正し、地方の人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力を上げることを目的とした一連の政策です。2014年9月3日の第2次安倍改造内閣発足後の記者会見で発表されてからもうずいぶん時間が経ちます。政府のウェブサイトにいくと、それからの実績なども掲載されているのですが、「創生」という言葉に込められた気持ちには程遠い実績しか掲載されていないのがまことに残念です。
図 1 政府の「地方創生」ウェブサイト。事例のトップページ[1]
辞書で「創生」とひいてみてください。「初めて生み出すこと。 初めて作ること。」と出ています。「地方創生」という言葉を考えた人には、それぞれの地方で「初めて生み出すこと。 初めて作ること」を期待したのでしょう。これまであるものを活かすとか、これまであるものを改良するのではなく、何か新しいものを「初めて生み出すこと。 初めて作ること」。しかし残念ながら紹介されている事例の中には「初めて生み出すこと。 初めて作ること」は、ほとんど見つかりません。
地方創生の基本
地方創生の基本は『まち・ひと・しごと創生「長期ビジョン」「総合戦略」「基本方針」』として簡略にまとめられています[2]。
人口急減・超高齢化という我が国が直面する大きな課題に対し、政府一体となって取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生することを目指します。
人口急減・超高齢化という我が国が直面する大きな課題に対し、
政府一体となって取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生することを目指します。
人口減少を克服し、将来にわたって成長力を確保し、「活力ある日本社会」を維持するため、
「稼ぐ地域をつくるとともに、安心して働けるようにする」
「地方とのつながりを築き、地方への新しいひとの流れをつくる」
「結婚・出産・子育ての希望をかなえる」
「ひとが集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域をつくる」
という4つの基本目標と
「多様な人材の活躍を推進する」
「新しい時代の流れを力にする」
という2つの横断的な目標に向けた政策を進めています。
中でも重要なのは 「稼ぐ地域をつくるとともに、安心して働けるようにする」という点です。いかにその地方が魅力的であっても仕事がなければ人は生きていけません。稼げて安心して暮らせるからこそ「地方への新しいひとの流れ」ができ「 結婚・出産・子育ての希望」がかない、 「ひとが集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域をつくる」ことができるからです。
DX学校の取り組み
DX学校をスタートさせるまで、DX学校の運営母体である株式会社ディグナでは、全国の中小企業のIT導入の相談サービスを実施していました。2020年には年間2,000件を越える相談を受けていました。この中で感じてきたのは、地方の中小企業の疲弊と、それに伴う地域全体の疲弊です。町を支えてきた中小の工場は海外に仕事を取られ、賑わっていた商店街は郊外にできたショッピング・モールにお客を奪われ、すっかり疲弊してしまっています。新幹線を降りても駅のデザインはどこも似たりよったりで、自分がどこの駅に降りたのかわからなくなることもあります。駅前にあるのは決まってケータイ・キャリアのショップで、町を走るクルマのボディに目立つのはデイサービスの会社のペイントです。
こんな状況を目にしてスタートさせたのが「DX学校」です。
DX学校では
- ステップ1で、まずテレワークを実現させ、
- ステップ2で、各事業所に合った仕事のデジタル化を進めて社内資源に余裕を作り、
- ステップ3で、これからの時代に合ったビジネスへの転換を図っていく
という教程で学びます。
「ステップ1」「ステップ2」で実現するのは、今やっているビジネスの効率化と生産性向上です。今のビジネスで何とか食べられているうちにこれを効率化し、生産性を向上させて中小企業の「ヒト・モノ・カネ」に少しでも余裕を作り、余裕のできた社内の資源を使って、その地域ならではの新しいビジネスを「創生」していただきたい、そのリーダーとなる人材づくりをお手伝いし、それでもうまくいかないようならIT導入の支援もしていく、という方法です。
DX学校のメインの対象は「デジタル・ゼロ」の中小企業です。この人たちに21世紀の武器であるITツールを使いこなしていただき、まずは今のビジネスを円滑に進めていただいた上で、更なる高みを目指していただきたい、という思いです。
自社や自分の地域の良いところは、ずっとここにいると理解できないことがあります。どんなに美しい田園風景でも、生まれてからずっとここにいるとウンザリする景色になってしまい、全然美しいなどと思えないものですよね。そのために「外からの目線」でコンサルティングすることもDX学校の内容の一つです。
文字通りの「創生」を一つ一つの企業が成し遂げ、地域全体が「稼ぐ地域」となり、地方が豊かになっていく。これがDX学校の目指すところです。
[1] https://www.chisou.go.jp/sousei/case/index.html
[2] https://www.chisou.go.jp/sousei/mahishi_index.html#an1